私は、ペンとインクを使ってスケッチしたあと、水彩で色をおいて仕上げるという方法が気に入っています。そういう描き方で絵を描くとき、こだわっているのが、ペンと水彩紙の種類や規格です。
ペンの方は、以前、パイロット・ドローイングペン(油性)や、サクラ・ピグマグラフィック(水性)、ステッドラー・ピグメントライナー(油性)等の0.1~0.3ぐらいの細めのものを使っていました。水性のペンでも、乾いてから水彩絵の具を使えば滲んだりするようなことはありません。上の図3「トレビの泉の前で」は、2004年にイタリアのローマで鉛筆スケッチしたものを元に、ペンで描きなおしたものです。これは、鉛筆の下書きなしで、極細のペンを使って描いたあと、水彩で色をつけました。紙はキャンソンファインフェースを使用しました。
「グランプラス」(ベルギー) 図4
図4は、細めのサインペンを使って、少し早描きしたスケッチに水彩を施したものです。こちらの方は、やや早描きしている分だけ、少し動的な雰囲気が表れているでしょうか。2005年に描いています。サインペンでしたので、紙は厚手のものを使っています。
このころから、いろいろな種類のペンを試しているうちに、「葦ペン」にもめぐり合い、それで描いた時期もあったのですが、戸外で使う便利さを考えて、万年筆タイプのペンを使うようになりました。プラチナ万年筆から出ているもので、黒のカーボンインク(カートリッジ)を使えるものがあったので、細描き用と太描き用の2本を携帯して使い分けていました。 “遠近感を線の太さで表現したい”と考えるようになったからです。
その後、セイラー万年筆長刀(なぎなた)研ぎコンコルドエンペラーというペンがあることを知りました。一本で、極細と極太の線が描ける万年筆で、耐水性のインクを入れて、スケッチの線描に使っています。
気に入った画材を見つける私の旅は、その後も続き、現在は、パイロット・レタリングペン(油性)2.0というペンを良く使います。このペンは、そのペン先に特徴があり、形が油性マジック(太字)の先に似ていて、円筒形でなくノミのような平たい形状をしています。このペンを使って、中目から荒目の紙にスケッチすると、「かすれる線」と「勢いのある太い線」が描けます。この線の太さの微妙な違いやかすれが、雰囲気のある線描を助けてくれるようになりました。使い慣れることが必要ですが、試してみる価値はあるように思います。
水彩紙の方ですが、ペンで描いたときにあまり引っ掛からない紙質のものがいいと思います。私のお勧めは、ケント紙です。できれば、四方を糊付けしたブロックのスケッチブックを使うと、水彩で紙が濡れても反り返らないので彩色がやりやすいのです。残念ながら、ブロックタイプのケント紙は手に入らないようです。時間と手間がかかりますが、水張りして使うのがいいですね。あと、ケント紙のように表面がキメ細やかな紙は、ウォッシュした絵の具が流れ、色と色が微妙に混じりあうところが、おもしろい効果を生みます。最後に、その例をお見せします。
横浜の金沢区、金沢八景にある小さな湾の風景です。小雨が降る中で、スケッチし彩色したものです。
BBケント紙を使用しました。
「野島夕照・1」(横浜) 図5
「野島夕照・2」(横浜) 図6
ペンの使い方としては、遠景は、やっくり軽やかタッチでペンを走らせ、前景ほど早く鋭いタッチで、ペンを使うといいかと思います。
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