ブルージュの町並み 図8
葦ペンを使う時は、鉛筆であたりを取ったり下描きをした線を上からなぞるような事はしないで、インク(私は耐水性のインクを使用)をつけて、そのまま直に描くようにしている。下書きの線にとらわれてしまうと、折角のペン描きの勢いが削がれてしまうように思う。遠景の部分から描き始めて、画面の左から右へ展開しながら進めていく。インクが乾いていない上から手を置いたりすると汚れるので、別の紙を上からあてがって描くという注意も必要だ。
葦ペンは、力の加減がダイレクトに紙面に伝わり、万年筆やサインペンのように同じ太さの線を描くのは容易ではない。微妙な力の入れ具合が線の太さに敏感に表れていく。力の入れ具合を間違うと、インク溜まりが出来て、その部分だけ目立ってしまう。また、仕上がったと思った紙のうえにインクが落ちたりして滲みになってしまうこともある。扱いが難しい分だけコントロールが必要だが、紙の上に引かれた線には特別な味わいがあり、それが葦ペンの魅力でもある。
私の場合は、太さの違う葦ペンを2~3本用意しておいて、遠景から中景にかけては、極細のペン先のものを使い、細くて軽い線で描き表わし、近景にかけては太目のペン先のものに持ち替えて、太く重い線で描くように心がけている。線の強弱、淡濃で遠近を表現したいと思うからだ。
葦ペンで描くのに相性の良い紙は、表面の滑らかなものが良いと思う。ペン先が紙面に引っ掛からないものが描きやすいので、私の場合はもっぱらケント紙を使っている。細目の水彩紙でも良いだろう。
葦ペンだけでなく、ほかのペンを使う場合でも同じことが言えると思うが、線描はできるだけ控えめにして、必要なところに入れるようにしたい。空や海、木々の枝葉などの細部は、筆による彩色に任せることが肝心だと思う。ただ、言うは安しで、得てして描きすぎてしまうことが多いように思う。私の場合も、全くその通りで、頭では分かっていてもいざ描き始めると、細かいところを描きすぎて、気がついたら色をつけなくても良さそうなときが沢山ある。
理想的なことだが、筆だけで描きあらわして、必要なところに後から少しペンで線を入れる程度に仕上げられたら、水彩の色合いとペンの線が気持ちよく響きあって一体感を表現できるように思う。残念ながら、それは今のところ「絵に描いた餅」というところだ。精進、精進。
葦ペンは、出来上がったものをインターネットでも買い求めることが出来るが、私の場合は、素材の葦を手に入れて手作りで製作している。その方が、自分の好みに応じた葦ペンが使えると思うからだ。葦ペンというのは、何か旧式な画材で不便だったり使い勝手が悪いようにみえる所もあるが、時代から取り残されたような素朴さが、また良さでもあると思う。
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